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停車位置マーク

駅のプラットホームで足元の乗車位置マークの場所に立って前を見ると,線路の向こうに横に3つ並んだ輪がかかれたやはり乗車位置を示すプレートが立っていることがあります。3つの輪はどれも同じ大きさで等間隔に並んでいるので立体視の条件にぴったりで,交差視をすると輪が手前に浮かんでいるように見えます。

これを平行視で見ようとしても,輪と輪の間隔が広すぎて重なるところまで像を寄せることができません。交差視を試してみると,プレートまでの距離の割には輪と輪の間隔が狭く,左右の視線は深く交わりすぎて像は重なってほしい場所を通り越してしまいます。しかし,この像が行き過ぎた状態から視線の交わりをゆっくり浅くしていくと,左右に分かれた像が次第に近づいていき,重ね合わせることができます。

左右に分かれた3つずつの輪の内側の1つずつを重ね合わせると,輪はとりあえず横に5つ並んで見えます。その状態を崩さないようにしばらく我慢していると,真ん中の1つの輪だけがそこから離れ,目の前の線路上に浮かびます。今度は,3つずつ左右に分かれた輪の内側の2つずつが重なるように見方を調節すると,輪は4つになり,内側の2つだけが両端の2つをプレートに残して宙に浮かびます。この像はしっかり安定していて瞬きしたくらいでは崩れません。

「グリッド」の場合は背景のビルや道路などに視線を向けることで自然に平行視が成立しました。「タイル」の場合も視線が向けられた自分の膝が引き金になって交差視が成立しました。ところがこの停車位置マークの場合はそういったきっかけとなるものが無く,意図的に立体視をする必要があります。日常の行為の中に新たな空間を求めるのが亜空間の基本的な態度なので,この現象は少し道が外れますが,立体視の訓練のつもりで試してみて下さい。